オムロン株式会社 インキュベーションセンタ長 竹林一氏が語る 「イノベーションをデザインする」講演会レポート
2019年6月26日(水)に開催された、オムロン(株) インキュベーションセンタ長 竹林一氏が語る「イノベーションをデザインする」講演会の概要をレポートさせていただきます。
1981年入社以来、数々のイノベーションを実現してきた竹林氏。今回の講演では、大手企業でイノベーションを生み出すための人材と仕組みについてお話をいただきました。
オムロン(株)は創業以来、イノベーションとは何かを定義づけ、それらを着実に実践してきた企業です。同社が定義づけたイノベーションとは、社会的課題を解決すること。いわばソーシャルニーズの創造です。
価値創造には「起・承・転・結」の人材力が不可欠
では、オムロン(株)が、また竹林氏が定義どおりにイノベーションを実現してこられたのはなぜでしょうか?
第一に新しい価値を生み出すために、バラエティ豊かな人材が必要不可欠と考えたことです。それは、名付けて「起・承・転・結」と大きく四つに分かれます。
「起」とは0から1を仕掛ける人材で、その特徴はアート思考、妄想設計型です。
「承」は0をN倍化する為の構造をデザインする人材、構想設計型です。
「転」は、1をN倍化する過程で効率化・リスクを最小化する人材で機能設計型。サイエンス思考です。
「結」は最後に仕組みをきっちりオペレーションする人材で、クラフト改善思考です。起承転結に優越はなく、いずれもイノベーションには不可欠と言えます。
現状の企業には、妄想設計を構想設計に落とし込み、機能設計(緻密な事業戦略)に繋ぐ「承」人材の育成は必須です。
また、それぞれを最大限に活かす制度やマネージメントなども必要になってくるでしょう。
新しい「軸」が新しい世界を創造する
次に、イノベーションには、「軸」が必要だと竹林氏は述べています。新たな事業の軸を定め世界観をデザインするのです。
これまでもてはやされてきた顧客価値やビジネスモデルはそろそろ賞味期限が切れ始めています。
たとえば、1967年にオムロン(旧・立石電機)が北千里駅に設置した日本初の自動改札機。竹林氏が担当した2000年10月には、20世紀最大の駅務システム(共通カードシステム)を開発、新たな顧客価値を生みだし、価格もレクサスくらいしました。
しかし、時を経て蓋を空けてみると、ICカードが普及する中、メカトロ二クスと言われた機械部分がなくなり軽自動車くらいの値段になってきました。まさに賞味期限切れです。
そこで竹林氏は新たな事業軸を設定しました。
駅は従来の「鉄道の入り口」という視点を変え、21世紀は「街への入り口」という事業軸にシフトさせたのです。改札機を人と人のコミュニケーションを生むツールへと昇華させ、子どもが改札機を通過するとお母さん、お父さんにメールが送信される安心サービスも生まれました。
新しい事業軸で新たな世界観をデザインした一例でしょう。
最後に竹林氏は、自分自身の軸を考えるべきと提案しています。
彼もまた、管理職になってから6年目のころ考えたそうです。
(オムロンでは管理職者は6年目に3ヶ月休暇を取るという制度があります。)
「私はなぜ生きているのだろう?」
「なぜオムロンで働いているのだろう?」。
自身の軸を見出す作業です。
答えは、「自然のエネルギー」を循環させること。山が大好きな彼は、仕事に疲れると山にこもり自然のエネルギーを享受する。そのエネルギーを、仕事に人間関係に、講演や出版によって世の中に発信する力へと変え、他者からまた何らかの力を得て自然へと帰すといったエネルギーの循環です。
結果、
・世の中にない新しい社会システムを創る
・目が輝くエンジニアを創る
の2つが彼の未来永劫なるミッションとなったのです。
みなさんもぜひ、自分の軸を考えてみてはいかがですか?
ライター 伊東りり子
コメントを残す