2018-10-17

OLから女優に転身で壁超え! chapter 1

<プロフィール>

           

 

 

 

 

上西 麻世さん(50代女性)

ハワイアンロミロミサロン「La・Mayo Style Ginza」代表・セラピスト、「ホリスティックALOHAスクール」校長。

和歌山県熊野古道出身。幼少期から事実上、シングルマザーの娘として育ち、21歳のとき、OLから芝居の世界に転身。某有名俳優の付き人、劇団員を経て、NHKの俳優マネージメント部門に所属。大河ドラマ、朝ドラなど数々のドラマに出演。40代半ばに、人を癒したいと「ハワイアンロミロミ」の資格を取得し銀座にサロンを開業。セラピスト、インストラクター、外部講師、サロン経営者など、多彩な顔を持ち活躍中。

La・Mayo Style Ginza ハワイアンロミロミ

https://www.aloha-field.com/

 

<家族編>

第一回

私の壁は実の「父」。

 

私は、父の記憶はありますが、思い出はありません。

私が生まれる前から愛人を作り、家にはいなかった父。

思春期のころまでは、父の顔なんて見たくない!

そんな風に思っていました。

 

母をさんざん悲しませた父を許せなかったから。

そう、私の眼前にそびえ立っていた壁は、父。

 

しかし、大人になった今、父にとても感謝している私がいます。

 

憎んだこともあったけれど、今はそう思える。

中島みゆきの「時代」ではないけれど、あんな時代があったね

と、いつの間にか笑える日が訪れました。

 

父は愛人を作り出て行った

日本が高度経済成長期の真只中だった1963年。

和歌山県新宮市という、のどかな田舎町で小さな命が産声を上げた。

 

名は上西麻世。

 

彼女は、このとき、これからさまざまな壁を乗り越え生きていくことなど、知る由もなかった。

 

彼女の父、泰明は資産家の息子。

幼いころから母・たえに溺愛され、いい大人になっても仕事に就かない、お坊ちゃん育ち。

純粋培養な環が災いし、すぐに人に騙されてしまうお人好しの世間知らず、金にも無頓着な人間に成長していった。

30歳になるころには、ようやく仕事に就いたが、ある時はかまぼこ製造会社の社長、ある時はプロパンガス会社の社長など、鞍替えが絶えなかった。

 

一方、母・晶子はとても芯が強く聡明な女性であった。

そんな女性でも、人を好きになると盲目になるのが世の常。

泰明のお坊ちゃん気質が見抜けず、頼りがいがある男性だと信じ込み、結婚を決めてしまった。

 

しかし、ふたりが所帯を持って間もなく、運命は思いもかけない方向に進んでいく。

泰明が、会社の従業員である既婚女性に軽い気持ちで手を出したのだ。

相手の女性・美由紀には、悪いことにやくざがついていた。

しかも美由紀はすぐに離婚。

泰明のもとにおしかけ晶子との離婚を迫った。

 

父は、家を出て美由紀と同居を始める。

相手の粘りに負け、また、やくざの脅しに身の危険を感じてのことだった。

そして、やくざ立会いのもと、「本家には一切、戻らない」という誓約書に判を押してしまった。

そんな夫婦でも、しばらくして子どもを授かった。

ところが、父は愛人に気を遣い、晶子におろしてくれと懇願。

仕方なく晶子は諦めたのだが、数年後、麻世を身ごもった。

 

晶子は、義母のたえに相談に行く。

「また、諦めなきゃいけないかしら?お義母さん」

「泰明もどうしようもないね。いつまで経っても。でも、あの子も、子どもができれば変わるかもしれんね・・・」

たえは、ため息をつきながら半ば諦めたように晶子に口添えした。

晶子は、その一言で産む決心をする。

もう、諦めることはしない・・・。

私がなぜ愛人に遠慮するのか?自分が生きたい人生を生きよう。

 

 

晶子は、義父が建てた家の一階で食堂を営み、生活費を稼いで麻世を育てた。

しかし、父は相変わらずお金にだらしない。

 

母娘に生活費を入れるどころか、金庫からお金を取っていく始末

依然、愛人と同居生活を送り、時々、愛人の眼を盗んでは、のらりくらりとふたりが住む家にやってくるのだ。

 

暑さが和らぎ始めた8月のある日もそうだった。

ひぐらしの「カナカナ」という鳴き声があたりに響き渡り、自転車を引いた豆腐屋のおじさんが吹くラッパの音が夕闇に溶けていく。

母は台所で夕食の準備に取り掛かっている。カレーの匂いが軒下にも立ち込める。

麻世はテレビの歌番組に見入っている。

 

そのとき、突然、玄関のベルが鳴った。

母がいそいそと出て行くと父が立っていた。

「おっす」

「あら、来たの?」

父の背後には、薄暗くなった路地が伸び街灯の下だけがほんのり明るい。

「あっ」

母はかすれたような小さな叫び声をあげた。

街灯の下に浮かび上がる女の顔を見たのだ。

その顔が、鬼のような形相をしてこちらに走って来る。

 

泰明の愛人・美由紀だった。

彼女は家の敷地に入ると、突然、晶子になにやら硬いものを投げてきた。

小石だ。

どこで拾ってきたのか、次から次へと投げつけ、その一つが晶子の頭にコツンと当たった。

晶子は玄関の引き戸を勢いよく閉めた。

 

「あなた、帰ってください!」

泰明は美由紀に腕を引っ張られ、無力な奴隷のように肩を落とし帰っていった。

美由紀の嫉妬心とその情念の深さに誰も立ち打ちできない・・・。

やがて、麻世が小学校6年生の時、母娘の生活に暗雲が立ち込めた。

それまで住んでいた家が立ち退きを迫られたのだ。

 

住む家がなくなる・・・。

しかし、祖父がふたりに救いの手を差し伸べてくれた。

別の土地に3階立ての鉄筋ビルを建てようと言ってくれたのだ。

すると、父の愛人の美由紀が聞きつけ、私たちには、数億円の借金がある、何とかしてくれと言い出した。

祖父はそれを鵜呑みにし、息子のためにお金の工面に走った。

当然、家の新築の話は頓挫した。

 

麻世は思った。

これまでも、何かとお金を無心する女だった。

借金の話なんて本当かどうかわからない。

母娘は、とうとう住む家を失った。

 

続く

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